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( ゚W゚)ブーンは悪魔憑きとなったようです

1 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 22:52:20.79 ID:03mleon20
( ゚W゚)ブーンは悪魔憑きとなったようです

(−_−)「ブーン系小説です。長編予定。
     描写に若干のグロ表現やいかがわしい表現がありますので、苦手な人には推奨できません。
     大丈夫な人は是非どうぞ。あびゃびゃびゃびゃ!! えひっ!!」

今日はその3〜その4までを投下します。
これまでのお話は以下のまとめサイト様を参照して下さい。
ttp://boonnovel.g.hatena.ne.jp/
ttp://vip.main.jp/
まとめて下さっているサイト様、ほんとーにありがとうございます。・゚・(ノ∀`)・゚・。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 22:52:24.92 ID:rpJJOciv0
    .ハ ,ハ
   /ノ/ノ
   (*^ヮ^) 2get
   ノ uul
 c(,,__,,ノ

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 22:52:33.65 ID:Tefbe6fa0
   /   //        l     |    、    ヽ \
  /  . :/ ,.イ   l   |  l   | |     ヽ    l: .  \
  \. :: ::/ /.:l l  |   l  |   j l l   |    l: :: :: . /
    ヽ/ / /| !   l   l  j}  /j ト l    l      iヽ: :/
     l /イ i l   !  l_/l   / | / ヽ| -- 、 |    l| V
     l {:/ l l   ト. ´j / j / ノ'   l\   j|    l:|  |\
   /l !'   l l   l jノ}イ_/´       ィ−ヽム!   /l:|  ヽ \
 ./  ハ|   ヽ ',  lY´{ ノ::ヽ       |ー':.:.:.l |  / j:|   l    Conroeの圧倒的性能と安さ
'´  _」 、 l / ト、  ヘ |::::::::::l      l:.:.:.:.:_! ! :/ ノ'   ヽ
  /  --, 、一 ト、  、 、_ソ         ゝ−'://!  、l /
_/    / | ヽ /: : ト. ._>xx   _    xx /': : : }  - , 、一
           lr 、:, ィ| `ヽ―――‐ -<´:_:_: : : :|:  / |\ 高くて低性能 高消費電力64・AM2
 \ | /    / ヽ〉  l   、 , -―- 、, -―-、杁: :}
 ―  ―   _〔入_i , -| i   { f´ ̄` ' ´ ̄ ヽ:}j |: :|
 / l n,ィ // ,.ィ ´  l l   { {   fjこス _j_} i: :|
   r//厶._: | .:/--   ヽ:|\ ゝ\ノ込'ソ\ /  l: :l  ヽ l /   AMDオワタ\(^o^)/
ヽヘ/\ヘヘ┘{ / _    \ \ く/-- '/_l_rz、_V|  ―,  、―
-―――-、 ̄'|}V! ノ:i     ィーj、ー 、 ̄l 〈,ィ { {ヽ」  / | ヽ
 |  /  , ―'ソ |::::::l     l:::'::::lY {ヽ l r_'_} } | |
 l /  { /こソ  ゝ '      、:::::ノ   | , 〉 〈_  Y イ
 _  〈└  ̄{ Xxx        xxX 」 |イト/ヽ}/ヘへ/ヽヘ_
{ イ /´>、._/\   c     _ -'_/ノ|, -‐ ' ´  ̄ `丶、 /

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 22:52:34.29 ID:Fty5hQfB0
ところでさ、そろそろ本気でVIPつぶす事考えないか?

1暇だから、寂しい等の理由で自分かまってスレ、全レススレを立てる女、中高生の増加
2↑にとともに沸いた、出会い系サイトからショボいガキだけ抽出したような出会い厨ガキの増加
3「w」の連打、「だお」「〜ス」をつけて安価でチャット会話みたいに馴れ合うのがVIPPERだと思っている
4女VIPPERの立てる自分のセックスや性癖、ナンパ系スレ。それに群がる出会い系のガキ
5専用板があるのに、かまってほしくてなんでもかんでもVIPでスレ立てて、ひたすら馴れ合う
6半年ROMという言葉も知らない厨房
7今日学校で・・・会社で・・・等のmixiの日記のようなどうでもいい日常報告スレ
8中高生のマジ恋愛相談スレの増加、彼氏が・彼女がという聞いてもいない恋愛報告
9何十・何百番煎じのネタをまだ引っ張ってる
10中高生びっぱあ大好き「安価指定」「安価で痛メール」
11「♀、○○才だけど」等の寒い年齢・学年・性別晒し
12大して特別な職業、役柄でもない、どうでもいい一般人の「質問ある?」
13ネタにマジレスの嵐
14(´・ω・`)や( ^ω^)、ぁぃぅぇぉ等、ギャル文字とVIP言葉が混ざった奇怪な言語の多用
15、OFF会大好き。びっぱあ同士で実際に会ったりVIP言葉でしゃべったりするのがクオリティ高い行為だと思っている。
16mixiやハンゲ等の他サイトにVIPノリ(wwwww・だお・ちょwwwおまwww・kwsk等)を持ち込む。
17安価で馴れ合い→「おごるよー」「会ってカラオケ、のみ会しよー」と、一番2chぽくない俗物ど素人な流れに→そして出会い系へ
18「VIPPER」であることを自慢にする、アイデンティティにするお子さま達
19「別に馴れ合ってもいいだろ」とか言い出す奴
20ネタでもなんでもない、素の相談事(他の専用板で立てると厨過ぎて叩かれるからVIPに立てる)
21女ですが、○歳ですが、とか書けばレスが伸びる
22、2chはVIPしか見ないお子様達
23アド、電話番号晒し、出会い目的のスレは、2chでは特定の馴れ合い板以外禁止だということを知らない
24ネタスレだろうが糞スレだろうが安価で馴れ合いチャット出会いチャット
25もうただひたすら安価で会話、安価で馴れ合い

素でいらないだろ、2chにこんなクオリティも糞もない、しょぼいネットミーハー厨房工房コミュニティ、常識的に考えて・・

5 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 22:53:18.60 ID:03mleon20
その3 「虎穴」

からんころん、と音がして、ブーンは扉を開く手を止めた。
視線を上にやると、手作り感満点のドアベルがプラリ。
店主の趣味か何か知らないが、小器用な割に作りが荒い。
どうせ、その荒さが味なんだと言い張るのだろうが。

(´・ω・`)「やあ、ようこそバーボンハウスへ。今日は飲めるのかい?」
( ^ω^)「どうも、だお」

かつての同級生の言葉に頷きながら、カウンターに向かう。
時刻は午後11時を回った頃。
店内はいつも通り意味もなくクラシック――今日はモーツァルト――が流れ、テレビの音声が混じっている。
テーブルを見ると、一目で肉体労働者とわかる連中が陰気にグラスを傾けていた。
その肌はところどころがガスにやられて黒く染まり、中には目をふくらませている者もいる。
床に転がる数人の人間は、まあいつも通りのジャンキーだろう。

いつも通りの様子に、若干安心感のようなものを覚えるブーン。
ここ最近、自分の身の回りがいくつも変容しているからだろうか。
変わらないものに対して、ブーンは懐かしさと安心感を感じるようになっていた。

6 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 22:54:17.47 ID:03mleon20
(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まずは飲んで欲しい」
( ^ω^)「ありがとだお」

いつも通りに滑り出てきたテキーラを、軽くあおる。
ブーンは酒に強い方ではないが、普通に飲むくらいは問題ない。
強いアルコールが喉を焼き、胃の中で熱い塊となって沈殿する。

(´・ω・`)「うん、なかなかいい飲みっぷりじゃないか」
( ^ω^)「そんなことないお。普通だお」
(´・ω・`)「そうかい? でも、いつもよりもさっぱりしてる感じがするよ」

ショップの片手間、趣味でやっているとはいえ、ショボンは真面目にバーを開いている。
そのショボンが言うのだから、今の自分は、少しはマシな飲み方が出来ているのだろう。

(´・ω・`)「いっとくけど、まだ情報は出来てないよ」
( ^ω^)「わかってるお。昨日今日で結果を要求するほど、ボクは鬼じゃないお」
(´・ω・`)「はいはい。あの時の君の様子じゃ、もう結果を聞いてきそうな気がしたんでね」

苦笑して、自分の分のテキーラをコップに注ぐショボン。
八割ほど入れられたそのコップを、カチリと合わせる。
その行動に意味はない。祝うようなこともない。合わせたいから、合わせる。

7 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 22:56:50.08 ID:03mleon20
(´・ω・`)「それで、何かあったのかい?」
( ^ω^)「何か、とは?」
(´・ω・`)「君が一週間のうちに二度も来るのは珍しいからね。何か新しい手がかりでも掴んだのかと思ったんだよ。」
( ^ω^)「……手がかりには、逃げられたお」

ブーンの脳裏に、昨日の様子が思い出される。
爆裂したヒッキー。
爆弾を持っていたわけでもないだろうから、あれは口封じの一種だろう。
おそらくは、何らかのキーワードで発動する『呪い』の類。

( ^ω^)「でも、いいんだお。今の方法で奴らに近づけることがわかったお」
(´・ω・`)「そうかい……でも、あまり危険なことはしないことだよ」
( ^ω^)「もちろんだお。ボクだって、まだ命は惜しいんだお」

言いながらグラスを傾ける。
熱い塊が喉を焼きながら落ちていくのを感じて、ブーンは目を閉じた。
痛みや苦しみ、それらは命の温度だとブーンは思う。
幸福のみの人生は、幸せであろうとも決して満たされたものではないだろう。
おそらくそれは、冷えびえとした合理的なものであるはずだ。

8 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 22:58:50.09 ID:03mleon20
(,,゚Д゚)「マスター。テキーラをくれ」

突然に。背後から、深く静かな声が響く。
驚いて、ブーンは思わず後ろを振り返った。
背後に立っていたのは、黒い軍用コートを着た長身の男。
意思の強そうな顔立ち、だが決してそれを振りかざそうとはしない冷静な目。
氷漬けにされたナイフのような、そんな男。

(´・ω・`)「あ……ああ、失礼。話し込んでしまっていたようだ。ようこそ」

ショボンが、やっとの思いで声を発する。
その様子を見ると、どうやら彼も男が来店していることに気づいていなかったようだ。
全く気配も足音も感じさせずに、男は店内に入り込んでいた。

(´・ω・`)「おまちどおさま。すまなかった、このテキーラはサービスにしとくよ」
(,,゚Д゚)「ありがとう、感謝する」

相変わらず気配も温度も感じられない男が、ブーンから少し離れたカウンターにつく。
目の前に置かれたテキーラを手にしながら、男が続いて口を開いた。

(,,゚Д゚)「ところで、2・3聞きたいことがあるのだが、いいか」
(´・ω・`)「なにかな? 知ってることなら答えるよ」

男はテキーラを一息にあおると、グラスを静かに置いた。

(,,゚Д゚)「『メリルヴィルの晩餐』を知っているか」

9 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:01:34.82 ID:03mleon20
店内の空気が止まった。

ブーンは空気の変質を、明確に肌で感じた。
その言葉を聞いた瞬間、ブーンの耳は男の声とショボンの声、そして自信の心臓の音しか聞こえなくなった。

(´・ω・`)「……まあ、聞いたことはあるね。知らない人の方が少ないんじゃないかな」
(,,゚Д゚)「ほう……どのような事を聞いている?」
(´・ω・`)「世界崩壊の立役者、世界最大のカルト組織、現在は潜伏する者が多数存在」
(,,゚Д゚)「……続けてくれ」
(´・ω・`)「あとは……アメリカで発生した悪魔信仰の一つで、原子力発電所の同時爆破テロを実行」
(´・ω・`)「そのせいでアメリカ全土は核汚染され、完全封鎖されている、と。これぐらいかな」
(,,゚Д゚)「ありがとう。だが、それらは間違いだ」

そういって、男はショボンの説明を斬り捨てる。
ショボンが眉根をひそめ、ブーンは手元のテキーラを見つめながら身を固くする。

(,,゚Д゚)「第一に、やつらは世界崩壊の立役者ではない。実行犯そのものだ」
(,,゚Д゚)「第二に、カルト組織などという甘っちょろいものではない。悪魔信仰者の集まりだ」
(,,゚Д゚)「第三に、原子力発電所の同自爆はテロはやっていない。やったのは大規模な『悪魔降ろし』のみだ」
(,,゚Д゚)「最後に、アメリカは核汚染されたのではなく、悪魔降ろしの余波で全土が『奈落堕ち』してロストしている」

信じがたいことを一気に話して、男はブーンを見つめる。
ブーンはいつしか、顔を男に向けていた。
二人の間に、固い空気が流れる。

10 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:04:35.00 ID:03mleon20
(´・ω・`)「……えーと。あれかな、新しい新興宗教のお誘いなのかな?」

沈殿していくばかりの空気を破ったのは、ショボンの一言だった。

(´・ω・`)「悪いけれど、僕の店では一切の宗教的活動はお断りしているんだよ」
(´・ω・`)「以前に修験者が簡易式の護摩壇持ち出して祈り始めてからは、タバコ以外の火気も禁止しているしね」
( ゚ω゚)「…………」
(,,゚Д゚)「……ふん、食えない男だ」

ショボンの飄々とした顔を見て、これ以上の情報は得られないと判断したのだろう。
男は腰を上げて、数枚の紙幣と一緒に一枚の名刺をカウンターに置いた。

(,,゚Д゚)「都市警、最下層東分署のギコだ。何か思い出したことがあれば、ご足労願う」
(´・ω・`)「飲み逃げが起きたら、真っ先に届け出ることにするよ」
(,,゚Д゚)「是非。それと、行方不明や殺人事件もあれば、教えてくれて構わない」

心臓えぐりのようなものは特にな、と言い置いて、ギコは背を向けた。
その間、視線はショボンに固定されていたが、ブーンは大きな目でじっと見つめられているような気配を感じていた。

ギコが扉を開くと、からんころん、と音がした。

(,,゚Д゚)「……いい音だ」
(´・ω・`)「ありがとう。僕の手作りなんだよ」
(,,゚Д゚)「そうか。だが、あまりうるさいのは好きではないな」

そう言ってギコは扉を閉めた。
店内に、いつも通りの空気が戻ってきた。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:05:45.53 ID:WIKJxMbXO
しえん

12 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:07:14.05 ID:03mleon20
(´・ω・`)「……ふぅ。疲れた」
( ^ω^)「……」

ギコが出て行って数分後。
ショボンは、やっと口を開いた。

(´・ω・`)「ブーン。どうやら君の掴んだ手がかりは、必要以上に事を大きくしたみたいだね」
( ^ω^)「……ボクは掴んでなんかいないお。ただ接触しただけだお」
(´・ω・`)「それで十分なんだろうさ、彼らにとっては」

弱ったなあ、目をつけられたらどうしようかなあ。
そう嘆くショボンに対して、それはないだろうとブーンは心の中で請け負った。
ギコと名乗った男の視線。
直接向けられていなくとも、その視線はブーンをずっと見ていた。

(´・ω・`)「それにしても、いきなり『メリルヴィルの晩餐』の話を直球とはね。まいったよ」
( ^ω^)「ボクも驚いたお。多分、あの話は都市政府の機密事項のはずだお」
(´・ω・`)「最強のカードをいきなり叩き付けて、後はこちらの出方待ちか。なんとも陰湿なことだよ」
( ^ω^)「自分の手持ちのカードは全く見せずに、相手を誘うには最高のやり方だお」

あの話しぶりだと、どこまで深い話を知っているかわかったものではない。
心臓えぐりの事件を『メリルヴィルの晩餐』と関連づけて話したことも、おそらくは計算尽くだろう。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:09:24.36 ID:pg4Al+pzO
wktk

14 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:10:01.92 ID:03mleon20
(´・ω・`)「それで、どうするんだい、ブーン」
( ^ω^)「何がだお?」
(´・ω・`)「まさか、わざわざ出向いて情報提供を促すつもりはないだろうね?」
( ^ω^)「いくらボクでも、進んで虎穴に入るような危ない橋はわたるつもりないお」

そう言ったブーンの顔を、ショボンはじっと見つめる。
ブーンのことをよく知る同級生は、ブーンの性格からして大人しくしているとは思っていないようだ。

(´・ω・`)「……まあいいさ。でも、都市警と繋がりを持つのは、あまり歓迎しないな」
( ^ω^)「ショボンに迷惑をかけるつもりはないお」
(´・ω・`)「そう言うなら、最初からこんな話を持ち込まないで欲しいな」

苦笑して、手つかずだったテキーラを軽くあおるショボン。
ブーンもまたテキーラをあおって――そこで気がついた。

――『……いい音だ』
――『ありがとう。僕の手作りなんだよ』
――『そうか。だが、あまりうるさいのは好きではないな』

ギコが入ってきた時、ドアベルは音を鳴らしたか?
あれほど特徴的でうるさい音に気づかないほど話し込んではいない筈だ。
ましてや、空調の風ですら軽く音をたてるドアベルは、どんなに静かに扉をあけたとしても鳴らないはずがない。

もしかしたら、本当にやっかいな相手に目をつけられたかもしれない。
そう思って、ブーンはテキーラを一気にあおった。
強いアルコールが染み渡り、ブーンは軽く咳き込んだ。


「虎穴」終

15 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:12:27.79 ID:03mleon20
「幕間」

人間が栄華を極めた古の時代。
その時代から生きる人間は、すでに現代には存在しない。

地は割れ、海は溢れかえり、湖は干上がった。
空は穴が開き、有害な光が降り注ぎ、緑も生物もほとんどが絶えてしまった。

その中で人間が生き残れたのは、全ては時の支配者が作り上げた都市政府のお陰である。
人間の生活に必要なものをありったけ詰め込んだ巨大な缶詰。
閉鎖された世界の中で生きる人間は、しかし段々とその精気と新鮮さを失い、腐り始めていた。

人口の増加に伴って地下へ地下へと成長を続ける巨大閉鎖都市。
世界中に数個ほど作られたそれらの中で、人は明日とも知れない日々を送る。
疲労と諦観が地下深くに沈殿し、そのねっとりとした液溜まりは足下から徐々に人々を浸食していた。

隣り合った人間が死ぬたびに。
駅で乗り合わせた人間が傷つくたびに。
目があった人間がいなくなるたびに。
人々の魂は少しずつ削られ、消費される。

メリルヴィルの晩餐は、そんな世界を生まれ変わらせるために生まれた組織であるという。

16 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:13:52.41 ID:03mleon20
メリルヴィルの晩餐。
彼らについて判っていることは、その行動と組織の規模に対して驚くほど少ない。

曰く、アメリカを核汚染で封鎖させた悪魔信仰者。
曰く、地球環境を変化させ、人々を都市においやった。
曰く、世界崩壊のきっかけとなった戦争は彼らが起こした。
曰く、――

崩壊前にあれほどいた信者達も、人々が都市に移り住んでからはほとんど姿を消した。
彼らがどこに消えたのか。それを知る人間は存在しない。
噂では悪魔への生け贄として捧げられたのだとか、どこぞで集団自殺をしたのだとか。

しかし、彼らは未だに時代を越えて、時折その姿を現している。
都市警はおろか、都市政府ですら手が出せない超大規模カルト組織。
それが現代での一般的な認識となっていた。

17 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:15:28.26 ID:03mleon20
その4 「悪魔会合」

ブーンがギコと遭遇して、一週間がたった。
あれからギコがバーボンハウスへやってくることはなく、最下層はいつも通りの喧噪に満ちている。

異常な事件、その中でも特に異常性を際だたせている事件を追い求めてブーンは捜索する。
心臓えぐりのように異常な事件は、ブーンと同じく『悪魔憑き』によるものが多いと思ったからだ。
確証はない。だが、ありえないとも言い切れない。
ショボンの情報には期待しているが、それだけでは集まる情報が少なすぎる。

メリルヴィルの晩餐。
ブーンに力を与え、捨てた組織。
せめて彼らの末端に接触できればと、藁にもすがる気持ちで始めた捜索。
それは実を結んだかと思ったが、あの一件以来、何の情報も掴むことは出来ていない。

( ^ω^)「……やっぱり、虎穴に入らなければならないのかお」

完全に手詰まりとなった捜索。
それでも諦めずにブーンは事件を探し、常夜の最下層を歩き回る。
ギコに接触するのは、出来るだけ避けたい。
得体の知れない相手でもあるし、何より自分の力でこの件は解決したかった。

悪魔憑きが近くに居れば、『足』が教えてくれるはずだ。
生きたセンサーを頼りに、ブーンはあらゆる場所へと足を向けた。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:16:01.33 ID:pg4Al+pzO
支援

19 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:18:21.16 ID:03mleon20
メリルヴィルの晩餐について、ブーンは多くを知らない。
最初にして最後の接触――『悪魔憑き』にされた時に得られた情報は大きかったが、それからの進展はゼロ。
わかっていることはギコが語ったこととほぼ重なる。

悪魔憑きの情報にしても同様に少ない。
体の一部を依り代にして悪魔の特性を体に降ろす邪法。
一般には秘匿されているが、その存在は一般社会に食い込み、人々の生活を直接的、間接的におびやかす。
完全に独立した結界として人の体を捉え、その内に高次の存在を召喚した『生けるデーモントラップ』。
魂を元に契約する魔女などと違って限定的な契約であるため、魂は負の引力に引きずられて堕ちることはない。
しかし、適正の無い者が悪魔憑きの儀式を受けた場合だけは別だ。
一瞬でその魂と肉体は食い荒らされて、地獄へと真っ逆さまに落ちることとなる。


馬鹿馬鹿しい、と鼻で笑うような話。
ブーンも、普通であればこんな話は到底信じなかっただろう。
科学と合理性で出来た都市の中で、悪魔だとか魂だとかを、存在するかのようにのたまう。
狂った信者共が描いた妄想だと、何も知らない人からは一蹴されること間違いなしだ。
だが、これが本当の話であることは、誰よりもブーン自身が体験している。
そしてブーンは、大切なものを奪い取った奴らを許さない。

20 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:20:45.79 ID:03mleon20
( ^ω^)「お?」

メインストリートから若干離れた路地に入ったとき、ブーンの目に言い争う二つの人影が飛び込んできた。
一人は男、もう一人は女。
風俗関係だと一目でわかる女に、男はしつこく絡んでいた。

( ゚∀゚)「なあ、いいだろ? ちょっと胸を見せてくれるだけでいいんだよ」
女「いやだって言ってんじゃないの!! この体だって金がかかってんだ、あんたにタダで見せる筋合いはないよ!!」
( ゚∀゚)「いいじゃねーか、減るモンじゃなし。ちょっとばかしポロリを恵んでくれたっていいだろよ」
女「しつっこいねぇ!! それ以上言うなら店のモン呼ぶよ!!」

言い争いを続ける二人。
大方、女を買った男が金払いをしぶるか何かしたのだろう。
このあたりではそれこそ日常茶飯事の光景だ。
ブーンは興味を失ってその場を離れようとした。
正義面をして助けるほど暇ではないし、助けて利があるわけでもない。
無色透明の無関心。
それが下層で生きる賢い術である。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:21:41.74 ID:Ry1n+ZVa0
支援

22 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:22:51.68 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「まぁまてよ、ちょっとだけでいいんだって。な?」
女「嫌だってば!! イカ臭い手で触んじゃないよっ!!」

――パシンッ

鋭い破裂音に、思わずブーンが足を止めて振り返る。
見ると、女が手を振り抜いた姿勢で止まり、男は横っ面を張り飛ばされて顔を横に向けていた。
ああ、まずいな、とブーンは思った。
言い争いならともかく、ああされては男も引っ込みがつかないだろう。
しかも、よく見ると男の右頬が裂けて血が流れ出ている。
女の指に嵌めた指輪で頬肉がざっくり切れたらしい。
メインストリートの喧噪が遠く聞こえる路地裏。
数人の浮浪者の目があるにせよ、男が暴力をふるうことにためらうはずがない。

( ゚∀゚)「……」
女「あ……あんたが悪いんだよ!! し、しつこくするから!!」

言い訳をするように吐き捨てる女。
男はゆっくりと顔を戻し、頬に左手を当てた。

( ゚∀゚)「……いてぇ」

頬に当てた手を開いて、そこに血がついていることを確認。
意外と深い傷だったのか、その血はかなりの量だ。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:23:39.69 ID:4rKy53EK0
マローネ?

24 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:25:07.89 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「あーあーあーあー……血が出てるよ。こんなに、大量に」

そう言って、男は口元に手を持って行き。
べろり、とその手についた血を舐め取った。

( ゚∀゚)「もったいねー。もったいねーなー、血がこんなに出てるじゃねーか」

べちょり、べろり。べちょり、べろり。
頬に手をあてては付いた血を舐め取る。
何度もその行動を繰り返す男の異様さに、女がおびえて後ずさる。

( ゚∀゚)「もったいねーなー、おい。血ってのは命なんだぜ。滋養なんだぜ。栄養なんだぜ」

べちょり、べろり。べちょり、べろり。
べちょり、べろり。べちょり、べろり。
べちょり、べろり。べちょり、べろり。

幾度となく繰り返される男の奇行。
耐えきれなくなったのか、女が悲鳴を上げて背を向ける。
そして逃げようとして、しかしそれは叶わなかった。

( ゚∀゚)「まあ待てよ」

男が右手を伸ばし、女を掴む。
ブーンの足がギクリと痛む。
瞬間、女の体が猛烈な音と腐臭をあげて瞬く間に腐った。

25 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:27:53.03 ID:03mleon20
――バジュウゥゥゥゥゥ

女の体の水分が蒸発し、残った肉がみるみる腐敗していく。
あたりに漂う猛烈な腐臭。
女は悲鳴を最後まであげきることなく事切れた。

( ゚∀゚)「あ、しまった。またやっちまった」

ふと気づいて、男が腐り果てた死体から手を離す。
死体はそのまま膝を折り、腰が折れ、背骨も何もかもがぐずぐずとなって地面に広がった。
完全に液状の腐肉となった死体は、ぷつぷつと泡立ちながら未だに腐り続けている。
それを見るブーンの足は、ズキズキと鮮明な痛みを送り続けていた。

( ゚∀゚)「あー、もったいねーな。どうせなら血を啜ってからやるんだった」

いかんなぁ、どうもがさつなんだよなぁ。だから彼女もできねーのかなぁ。
そう言いながら、男が右手に付いた腐肉を払う。
ぴしゃりと壁に張り付いたそれを一瞥し、次に視線をブーンに向けた。

( ゚∀゚)「まあいいか。代わりに栄養になりそうな奴もみっかったことだしな」

ブーンの足が、一際大きくジクリと痛んだ。

26 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:29:46.41 ID:03mleon20
( ^ω^)「お前……『悪魔憑き』かお」
( ゚∀゚)「もちろんそうだぜ。あんたもそーだろ?」

秘密を見せびらかすように、右手をひらひらと振る男。

( ゚∀゚)「俺はジョルジュ。ジョルジュ長岡。あんたは?」
( ^ω^)「ボクはブーンだお」
( ゚∀゚)「ブーン?」

ジョルジュの顔がひそめられ、何かに思い当たるような表情を見せる。

( ゚∀゚)「……ああ、思い出した。ちょっと前のデキソコナイか」

せせら笑うようにブーンを見るジョルジュ。
その目が足に向いていることを確認し、ブーンは期せずして組織と接触できたことを確信した。

( ゚∀゚)「あんたの足、痛むだろ? そりゃそうだよな、うまく癒合せずにそのまま捨てられたんだから」
( ^ω^)「お前、組織の人間なのかお」
( ゚∀゚)「組織? おお、一ヶ月ほど前まではな。今は一介の浮浪者同然だけど」

軽く笑うジョルジュ。
一ヶ月ほど前までということは、今は組織を離れているということだろうか。
それでもかまわない。少しでも情報を得ることが出来るなら、なんでもいい。

27 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:31:19.53 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「まあ、ここで知り合ったのも何かの縁だ。よろしくやるか、よろしく殺り合うか、どっちがいい?」
( ^ω^)「お前みたいな奴とよろしくやるのは御免だお」
( ゚∀゚)「つれないこったね。んじゃ、殺り合うとするか」

悪魔憑きを喰うのは久しぶりだから、丁度いいや。
そう言葉を続けて、ジョルジュが右腕に力を込める。
右手が黒く変質し、鱗が生え、その長さが二倍ほどに伸長。
爪が牙のように鋭く尖り、関節の無くなった腕が、じゃらりととぐろを巻いた。

( ゚∀゚)「俺はジョルジュ長岡。憑いてるのは『ニーズホッグ』。あんたの持ち駒は?」
( ^ω^)「知らんし、知りたくもないお」
( ゚∀゚)「ほんっと、つれないよなぁ。そんなんじゃ女にもてないぜ?」
( ^ω^)「お前こそ、右手にそんな汚いモンぶら下げてたら、まともな女は寄りつかないお」
( ゚∀゚)「ひゃひゃ!! ちがいねぇ!!」

軽口をたたき合いながら、ブーンとジョルジュが間合いを詰めていく。
じゃらり、じゃらりと音を鳴らしながら、ジョルジュの右腕が鎌首をもたげて威嚇する。

( ^ω^)「もしかしたら殺してしまうかもしれないから、先に聞いておくお」
( ゚∀゚)「あん? なんだ?」
( ゚W゚)「ツンは……ボクと一緒にお前達がさらった人は、どうした」
( ゚∀゚)「はぁ? ツンだぁ?」

ギラリと凶暴な顔を覗かせて、ブーンが問う。
その顔をニヤリと笑いながら眺めて、ジョルジュは言い放った。

( ゚∀゚)「……くっちまったよ。胸はたいしたことなかったが、中々うまかったぜぇ」
( ゚W゚)「そうか。じゃあ死ね」

両足に猛烈な風をまとわりつかせて、ブーンはジョルジュに向かって突進した。

28 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:33:09.73 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「死ねと言われて死ぬ奴がいるかよォ!!」

高く嘲笑しながら、ジョルジュは突進するブーンに対して右腕を大きく振るった。
長く伸びたそれは、地面をえぐり、壁をぶちこわし、それでも勢いよく迫ってくる。

( ゚W゚)「ふっ!!」

ブーンは両足に力をこめて跳躍。
足下を通り過ぎる黒い鞭をかわして、一気にジョルジュに攻撃をしかけた。
だが、眼前にブーンが迫っても、ジョルジュは顔に張り付かせた嘲笑を崩さない。

( ゚∀゚)「かみ砕かれて、腐って死ねバーカ」

ごう、と背後から猛烈なプレッシャーを感じる。
ブーンは本能的に体を捻り、背後に迫る何かに向かって、鋭く風を巻き付けた蹴りを放った。
背後にあったのは、長く伸びた上にぐるりと周回してきたジョルジュの右腕――ニーズホッグ。
蛇の頭に似た形をもつ先端を蹴り飛ばし、ブーンは勢いもそのままにジョルジュの後方に着地した。

( ゚∀゚)「おお、やるじゃねーか。大抵の奴はあれで死ぬんだけどな」
( ゚W゚)「お前のその腕……蛇か」
( ゚∀゚)「蛇っつーか、元は邪龍らしいけどな。まあ、あまりかわんねーだろ」

伸びきった右腕を手元に戻しながら、ジョルジュがブーンに体を向ける。
その背後、ニーズホッグがえぐった地面や壁が、材質に関わらず腐敗しているのを見て、ブーンは一筋の汗を流した。

29 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:34:49.07 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「俺はあんまり好きじゃないんだよ、これ。なんでも腐らせちまうし、見てくれも悪い」
( ゚∀゚)「でも、殺るのにはすげーいいから、とりあえずこれで我慢してる」

じゃらり、じゃらりと。
右腕を頻繁にくねらせながら、ジョルジュはブーンに話しかける。
心理戦などを狙っているのではないだろう。
ジョルジュという男は、いつどんな時でもこうなのだ。

( ゚∀゚)「お前の足のそれ、結構いいよな。カマイタチも起こせるみたいだしよ」
( ゚∀゚)「それで首をパツーンを飛ばせば、うまく血が飲めそうだぜ」

だから、それ、もらうな。
そう言ってジョルジュが右腕を振りかぶる。

( ゚∀゚)「ほいさっと!!」

空気を切り裂いて振るわれるニーズホッグ。
その黒い軌跡から、何か無数の細かい物体が散らばって飛んだ。

( ゚W゚)(広い――よけきれない!!)

広範囲に広がるそれは、ブーンの速度でも避けきれる物ではない。
考える暇もなく、ブーンは両足から凄まじい勢いで風を前方に向かって噴出させた。

30 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:37:02.92 ID:03mleon20
ぶあっ、と目に見えるほどの密度で広がる風の障壁。
瞬間的に大型台風をも凌ぐ勢いの風圧は、しかし飛来する物体の全てを防ぎきることは出来なかった。
ぼ、ぼぼっ、と音を立てて、数個ほどが障壁を貫通。
そのうちの一つが、ブーンの右前腕部に着弾した。

( ゚W゚)「ぐぁっ!?」

風の勢いで更に後方へと退いたブーンは、痛みの走った右腕に視線を落とす。
羽織っていた厚手の上着を貫通して、親指の爪くらいの、ギラギラと光る黒い物体が突き刺さっていた。

( ゚W゚)「くそ……鱗か」
( ゚∀゚)「ご名答!! 腐りはしねーけど、イタイだろ? どんどん行くぜぇ!!」

笑いながらジョルジュが連続して腕を振り回す。
腕が払われるたびに、ニーズホッグの体表から射出される無数の鱗。
まるでショットガンのように飛び来るそれは、致死性でなくとも多くもらえば動けなくなる。

( ゚W゚)「そうそう――何度もくらうか!!」

ブーンは連続して風を噴出させ、防壁を張りながらも高速で移動。
急加速と急減速により凄まじいGがブーンを襲う。
生身のままの脳と眼球は、幾度と無くブラックアウトを起こしそうになる。
指先などの毛細血管がパンパンにふくれあがって、いくつかが内出血をおこし始めた。


31 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:39:39.46 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「おいおい、大丈夫か? そろそろグロッキーになってきたんじゃあねーのか?」
( ゚W゚)「お前は自分の心配をしていろ。腕にプラプラと卑猥なモンぶら下げた阿呆が」

ひゃひゃひゃ、と笑うジョルジュ。
♪ 右腕ヘビさんプーラプラ  ♪ 股にもも一つブーラブラ
ブーンの言い回しが気に入ったのか、即興の歌を楽しげに歌っている。

( ゚∀゚)「楽しいねぇ、嬉しいねぇ。あんたガチガチの真面目君かと思ったら、そうでもなさそうじゃねーの」
( ゚W゚)「お前と話す口はない。臭い息を垂れずにかかってこい」

ジョルジュの笑みが深まる。
その間にも絶えず放たれる鱗の攻撃を避け続け、ブーンは高速で飛び回った。

( ゚W゚)「ふっ!!」

ブーンは右足を鋭く一閃。
鱗の隙をついてカマイタチを飛ばすが、ジョルジュは右腕をなぎ払ってそれを打ち消す。
鱗が数枚ほど飛び散るが、ジョルジュにはダメージが無いようだ。

強い。
今更ながらに、ブーンは相手の力量が自分を遙かに上回ることに気が付いた。
ジョルジュの攻撃は大雑把で荒い。
しかし、その荒さを上回るほどの反応と圧倒的な力。
ブーンの足はまだ動くことが出来るが、それに振り回される生身の部分は、そろそろ限界にさしかかっていた。

32 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:41:58.91 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「足下がお留守だぜぇ!!」
( ゚W゚)「しまっ……っ!!」

疲労の色が濃くなったブーンの一瞬の隙をついて、鋭く放たれる鱗の一撃。
それまでの物とは違い、複数枚の鱗を束ねたそれは、ブーンの生身の太股を大きく抉り抜いた。

( ゚W゚)「がぁっ!!」

大きくバランスを崩すブーン。
そのまま埃まみれの地面に、背中から勢いよく落下する。
肺の中の空気が押し出され、軽い呼吸困難になる。
激しい運動により酸素を要求していた体は、酸素が途絶えると共に激しい痙攣を起こした。

( ゚W゚)「が、ぐ……くそっ」
( ゚∀゚)「あんた、まだ戦い慣れしてないな? それでも、デキソコナイとは言えなかなかのもんだったぜ」
( ゚W゚)「く……知るか……」
( ゚∀゚)「へっ、そうかい。褒めてやってんのによぉ」

休み無く振るっていた腕を止めて、ジョルジュがブーンを見下ろす。

( ゚∀゚)「まあ、悪く思うなよな。俺は食事を邪魔されんのが大っ嫌いなんだ」
( ゚∀゚)「喰い損ねた分は、あんたからきっちり頂くぜ」

そう言ったジョルジュの右腕が、大きく先端から上下に裂けた。
その内側には、無数の牙が並んでいる。
ジョルジュはブーンを、文字通り『喰う』のだろう。

ブーンはゆっくりと迫ってくる牙を見つめながら、最後の反撃のために両足に力を込めた。

33 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:44:50.80 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「……」

だが、ジョルジュはその腕をそのまま進めようとはしなかった。
それどころか、ブーンから視線を外し、ブーンの後方に目を向けている。
その目は新しいオモチャを見つけたかのように光を放ち、顔の笑みは一層ギラついて見えた。

( ゚W゚)「……?」

不審に思ったブーンは、現状を忘れて思わず後ろを振り返る。
そしてそこに、黒い軍用コートを羽織った長身の人影を発見した。

(,,゚Д゚)「なかなか面倒な事に巻き込まれているようだな」

都市警のギコが、いつのまにかそこに現れていた。

34 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:48:19.97 ID:03mleon20
( ゚∀゚)「やれやれ……誰かと思えば、あんたか」
(,,゚Д゚)「ふん。腐った臭いがするとは思ったが、やはり貴様か」

目を合わせた二人が言葉を交わす。
旧知の間柄なのか、その言葉には親しみすら感じられるほどの敵対心が感じられた。
ジョルジュが開いていた腕を手元に戻し、戦闘態勢を取る。

( ゚∀゚)「それで、何の用だ? まさかこのデキソコナイを引き取りに来たのか?」
(,,゚Д゚)「そんなつもりは毛頭無い。俺はただ、貴様らを潰すために行動するのみだ」
( ゚∀゚)「おいおい、本気で言ってんのか、ギコさんよ」
(,,゚Д゚)「貴様ごときにジョークをきく口は持ち合わせておらん」

ギコはゆっくりと、しかし自然な足取りでジョルジュに近づく。
それを見たジョルジュは、円を描くようにして間合いを取った。
先ほどまでのブーンとの戦闘では、見せたことのない慎重さ。
それがすでに、ギコの実力を示していた。

(,,゚Д゚)「貴様と俺の相性は最悪だ。貴様には万に一つの勝ち目もないぞ」
( ゚∀゚)「そいつぁどうかな。もしかしたら勝てるかもしんねーぞ?」
(,,゚Д゚)「強がりはよすがいい。貴様の手の内は全て知り尽くしている」
( ゚∀゚)「……クソッタレが」

変わらず笑みを浮かべながらも、憎々しげに吐き捨てるジョルジュ。
混沌としてきたその風景は、しかし更にその度合いを深めることになる。

35 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:52:31.27 ID:03mleon20
/ ,' 3「その辺でやめておかんかね、『破軍』よ」

不意に上空から投げかけられた声に、その場にいた者達全てが上方を仰ぎ見る。
そこには、闇色のローブを纏った老人が浮遊していた。

( ゚∀゚)「『文曲』か……。余計なお世話だ、クソじじい。俺の食事の邪魔すんじゃねーよ」
/ ,' 3「ほ。いつにも増して元気なことじゃの。じゃが、そろそろ大人しく帰らんかね」
( ゚∀゚)「誰が、あんな陰気くせぇとこに帰るか」

諭すように話す老人に向かって、ジョルジュは吐き捨てるように言い放つ。
その瞳は紛れもない殺気を放っているが、態度はどこか子供っぽい。
まるで親に説教をくらう子供のようだと、ブーンは場違いなことを考えた。

/ ,' 3「まったく、世話がやける。我らが主にも、もう少し放任主義を見直していただかんとな」
( ゚∀゚)「一年に一度顔を出すか出さないかの主なんぞ知ったことか。俺はもう飽き飽きしてんだ」
/ ,' 3「それで、都市に出てやることは人食いかね? 少しは中間管理職の苦労も考えんか」

老人はやれやれと首を振ると、今度はギコに視線を移した。

36 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:56:15.35 ID:03mleon20
/ ,' 3「お前さんにも帰って来て欲しいんじゃが、やはり無理なんじゃろうなぁ」
(,,゚Д゚)「当然だ。俺はもう、貴様らと組む気はない」
/ ,' 3「そう駄々を捏ねずに。『禄存』も欠席であることじゃし。それに『廉貞』も待っておるぞ」
(,,゚Д゚)「……今は、敵だ」

『廉貞』という言葉が出た瞬間、ギコの強い眼差しが一瞬だけ曇る。
心の底を掻き乱されたような苦々しい表情が、その冷徹にも見える顔に浮かんだ。
その顔は後悔、そして諦めの表情のようにもとれる。

(,,゚Д゚)「……帰ってあいつに伝えろ。出来ることなら、俺の目の前にはもう現れるな、とな」
/ ,' 3「あの子がその言葉を飲むかどうかはわからんぞ?」
(,,゚Д゚)「それでも、だ。そこの馬鹿を見逃すんだ、そのくらい頼まれてくれてもよかろう」
/ ,' 3「ふむ、それなら仕方がないの」

長く伸びた顎髭をしごきながら、未だ空中に浮遊して頷く老人。
どのような力が働いているのか、そのローブは小揺るぎもせず、まるで地面があるかのようにそこに立っている。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/16(月) 23:58:26.85 ID:F1hiUZ39O
支援

38 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/16(月) 23:59:37.11 ID:03mleon20
/ ,' 3「では、行こうか『破軍』よ」
( ゚∀゚)「はぁ? 勝手に話を進めんじゃねーよじじい!! 俺は帰るつもりなんざねーぞ!!」

話がついたと思ったのか、老人は眼下のジョルジュに向かって話しかける。
ジョルジュはそんな老人を見上げながら、反抗するように叫んだ。

( ゚∀゚)「俺はもう抜けたんだ、『破軍』なんて名前で呼ぶんじゃねー!!」
/ ,' 3「我らが主はそう思っとらん。お前は未だに組織に名を連ねておる」
( ゚∀゚)「仲間をぶっ殺した奴に、おめでてーこった。勝手にほざいてろ、俺は帰んねーからな!!」

そう言い放つと、ジョルジュは右腕を大きく振った。
じゃらじゃらと鱗を鳴らしながら、ニーズホッグが長く伸長し、ジョルジュの足下にとぐろを巻く。
その上に飛び乗ると、ジョルジュの体はふわりと宙に浮き上がった。

( ゚∀゚)「ったく、勝手に色々しゃしゃり出てきやがって。興ざめだぜ」
/ ,' 3「またんか!! こりゃ!!」
( ゚∀゚)「知るかってんだ耄碌じじぃ!! せいぜい元気にマスでもかいてな!!」

わざわざアカンベェをしたジョルジュは、その身を加速。
凄まじい勢いで路地裏をすり抜け、暗闇へと消えていった。

39 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/17(火) 00:02:56.06 ID:/ylaXmqY0
/ ,' 3「やれやれ……困った奴じゃの」
(,,゚Д゚)「少しなら同情はしてやろう」
/ ,' 3「そう思うなら、儂の苦労を減らすために戻ってきて欲しいもんじゃな」

大きくため息をつく老人に、ギコが無感動に言葉をかける。
わかっていたことだが、二人は随分と深い知り合いのようだった。
殺意を振りまいていたジョルジュが消えたことにより、張りつめていた場の空気が和み、霧散していく。
この奇妙な会合が終わりを告げようとしていることを感じ取り、ブーンは痺れる体を起こして、老人に声をかけた。

(;゚ω゚)「ちょっと待つお!!」

震える腕を踏ん張って、空中の老人を見上げる。
老人は、まるで初めて存在に気づいたかのようにブーンを冷たく見下ろした。

/ ,' 3「なんじゃね、お前さんは」
( ゚ω゚)「ボクの名前はブーン。お前達に聞きたいことがあるんだお」
/ ,' 3「ブーン……?」

ブーンの名前を聞いた老人が、ジョルジュと同じような反応を返す。
やはり、何か思い当たる節があるらしい。

40 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/17(火) 00:06:58.59 ID:/ylaXmqY0
/ ,' 3「ふむ……いいじゃろ。言ってみなさい」
( ゚ω゚)「ボクは……ボクは、お前達に無理矢理『悪魔憑き』にされたんだお。そして大切な人を奪われたんだお」
( ゚ω゚)「ボクと一緒に連れて行かれた人は――ツンは、どうしたんだお」

言うことを聞かない体を、必死に押さえつけながら。
それでも、返答によっては許さないという気迫をこめて、ブーンは頭上の老人を睨み付ける。
だが、老人はその視線をどこ吹く風といった感じで受け流しながら、静かな声で問いかけに答えた。

/ ,' 3「全てを忘れ……静かにその短い生を全うするがいい、若者よ」
/ ,' 3「そしてその生涯において二度と、その尊き御名を口にしてはならん」

言い終えて、老人はブーンに背を向ける。
言外に、この話は終わりであると強く告げて。
それでもなお続けようとしたブーンの目の前で、老人のローブがゆらりと歪んだ。

――ごうっ

一陣の強い風が、老人に吸い込まれるようにして吹きすさぶ。
思わず目を閉じたブーンが再び目を開けた時、すでに老人の姿はその場から消えていた。

41 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/17(火) 00:09:14.41 ID:/ylaXmqY0
(,,゚Д゚)「……大丈夫か、ブーン」

老人が消えたことを確認したギコが、ブーンに歩み寄る。
未だに体の自由が利かないブーンを、力強い腕で支えて立たせた。

(,,゚Д゚)「お前の事情は知らん。だが、お前も奴らには何らかの縁があるようだな」

助け起こしたブーンに、存外優しい声音で話しかけるギコ。
張りつめていた緊張がほぐれ、かろうじて繋がれていた意識が瞬く間に闇に落ちていくのを、ブーンは感じた。
隣で何かしらしゃべり続けるギコの声が遠くなる。
周囲が暗闇に飲み込まれる途中、ブーンはただ一つの事だけを考えていた。


――『全てを忘れ……静かにその短い生を全うするがいい、若者よ』
――『そしてその生涯において二度と、その尊き御名を口にしてはならん』



42 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/17(火) 00:12:01.79 ID:/ylaXmqY0
奴は。おそらく組織に属する老人は、ツンの名前を『尊き御名』と言った。
ツンの現状は知らない。だが、生きていることは間違いない。

( ^ω^)(生きてさえいれば、必ず会える。助けられる。だから)

――だから、もう少しまっていて欲しいお

それだけを考え終えると、ブーンの意識は暗転した。


※ジョルジュ長岡
27歳。『メリルヴィルの晩餐』七柱の一人『破軍』。
元々は陽気な男だったが、三年前に組織に属してからは残虐性を増す。
いつも滋養と健康に飢えており、食事を邪魔されることを最も嫌う性格。
ニーズホッグ 《Nidhhoggr》出身地:北欧
ジョルジュの右腕に憑く悪魔。龍族で、分類は邪龍。
自在に長さを変えることができ、先端の牙からは全てを腐敗させる『フヴェルゲルミルの水』が分泌されている。
その体表は鉄よりも固く、鱗をショットガンのように飛ばすことも可能。
ニーズホッグはゲルマン神話における最も邪悪な存在。
「怒りに燃えてとぐろを巻く者」「あざ笑う殺人者」「恐るべき咬む者」など様々な二つ名で呼ばれ、恐れられている。
イグドラシルというトネリコの大樹の根の1本に噛み付き、世界の滋養を奪い、世界に暗い影を及ぼしている。
そして世界の終末ラグナロクの日には、イグドラシル全体を倒してしまうとされる。
霧深きニフルヘイムに湧き出ている、フヴェルゲルミルの泉という有毒の熱泉の底に潜んでいると言われる。
ニーズホッグはイグドラシルの根の滋養だけでは飽きたらず、死者を喰らい、その血をすするものとされている。


「悪魔会合」終

43 : ◆DIF7VGYZpU :2006/10/17(火) 00:15:01.35 ID:/ylaXmqY0
どうもー。今夜の投下はこれにて終了です。
次回投下は一日空けて、10月18日23時頃からとさせていただきます(´・ω・`)ノ
wktk、支援してくださった方々、読んでくださった方々、どうもありがとうごさいました。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/17(火) 00:15:34.10 ID:pq5eUJDfO
さるさる支援

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/17(火) 00:20:38.99 ID:po6/NGoe0
ん、乙

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/17(火) 00:34:24.51 ID:f7OBdUT3O
結局これってメガテンの方向で進むの?

47 :やわら  :2006/10/17(火) 00:55:40.56 ID:7JHnKZp80
や  

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/17(火) 00:57:35.32 ID:augiL4UT0
ケツ毛バーガーのzipあったお
http://space.geocities.jp/matome2000jp/ketuge-barger.html


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